仕訳帳、元帳からわかる会社、オーナー社長の現状

金融機関が融資している取引先の決算書に疑いをもったり、
本来の財務内容を知る必要があるとき仕訳帳、元帳を精査することがある。

その会社が架空の経費を計上しているのでなければ、現金の元帳をみれば
どんな理由でどんなふうに資金が不足したのか分かる。
もっとも、架空の経費が計上されている場合は、その数字を考慮して
資金の動きを見る必要がある。

仕訳帳、元帳を見るのはそれだけにとどまらず、さまざまなことがわかるのも事実だ。

企業の再生を頼まれて、始めてみるその会社の決算書だけでは
財務が把握できず、仕訳帳、元帳もいっしょにいただくとその会社の実状がはっきりすることが
きわめて多い。

そこでチェックするのは不自然な取引ということになる。

下記の例の会社の場合、毎月同じ日に同じ仕訳がされていた。
この会社は家族経営で、財務内容が悪化していたのだが、
この仕訳では、9月10日に
〇〇債権回収への返済、
家族への貸付、
オーナー社長からの借入金への返済があったこととなっている。

1回だけならまだしも同様の3件の仕訳が毎月行なわれていたとすれば何だろうと思うのは
当然だと思う。
この資金の流れは必要だから行なわれるものであり、当然そこには切迫した資金の必要性
があるのだと感じた。

そこで推測してみた。

〇〇債権回収への返済は、会社が銀行借入を延滞し期限の利益喪失→債権譲渡されたものの返済。

家族への貸付は、その家族従業員が税金、たぶん固定資産税を滞納し会社がこのような資金の流れで代わりに
納付しているもの、しかもその固定資産は会社が使っている資産。

オーナー社長からの借入金への返済は、やはりオーナー社長が滞納した税金の
支払をこの資金の流れでオーナー社長の収入にせずにおこなっているもの。

この推測を言うと、ずばり的中していた。

じっさい
仕訳帳、元帳からさまざまなことがわかるのだ。

 

試算表を見るとき注意すべきこと

私に役員になってほしいと以前から言っていた会社が、別の会社を買収するに当たり、株式価値を査定するので
決算書を先方に要求したところ、決算書が送られてきた。

そのときはいろいろな事情から買収をあきらめたが、半年以上経過してまた
同じ話が再燃し、試算表を送るという。

そこで、棚卸しは、決算と同じ最終仕入原価法で試算表の日付けでおこなってくださいと
お願いしておいた。

前期決算書で1億の資産が、試算表では1.6億円になっていて、資産が増えた分
利益も異常なくらいに増えていた。だが、よく見ると
資産の増加した部分は棚卸資産で、なんのことはない、儲かっているのではなく、
合計残高試算表では棚卸しをしていないから、こんな数字がでてきたのだと判明。
だから、棚卸しを試算表の日付けでしてくださいとお願いしたのに
言うことはきいてくれそうにない。

「試算表時点では、受注が多くすごく儲かっていて」と
買収される側の社長が言っていたというが、
じつは、試算表日付けでの棚卸しをしていないだけの話なのだ。

合計残高試算表はある程度まで信頼できるが、利益については
棚卸しがされていないのがほとんどなので、完全に信頼はできない。
中小企業の経営者でも財務に強くなければこの程度の理解なのだ。

融資をするときも試算表で判断するときは、その点が考慮される。

試算表では棚卸しに注意すべきだ。

消費税本則課税、税込経理における利益・税金のさじ加減

中小企業の節税というと、締後売上の10日分の翌期繰越とか、法人保険、
4年物の中古車とかの話がでてくる。
実際、節税の本を読むとそれらが書いてあるが、締後売上については売上も仕入も同等の扱いになるため
現実的ではなく。ほかは実際におカネがでていくものなどで、節税してもおカネが残らないことが多い。

今までいくつもの会社の再生や評価をしてきたが、B/S、P/Lだけではわからないが、
決算書すべて(内訳書、別表)、さらには元帳を見ると
うまく税金対策している会社のカラクリがわかることが多くあった。

たとえば消費税本則課税、税込経理の会社だと
決算期には法人税、地方税の予測と、消費税の予測が必要になり
課税金額と利益を調整するためにはさまざまな要因を考えることになる。

たとえば、労務費は消費税の対象外だが、製品の一部を自社で生産するのでなく
外注に出せば消費税はその分減らせる。
1個500円の材料が1万個あるとして、棚卸し金額はそれだけで500万円だが、
それを期末に400円で100個買えば出費は4万円だが、最終仕入原価法採用なら
その分の棚卸し金額は404万円となり、96万円程度の利益は減らせる。

これが、そのままの金額で利益に反映されないのは
消費税本則課税、税込経理だと、消費税の金額がそのまま
決算書の「販売費及び一般管理費」の中の租税公課などに計上され
損金処理されるから、その後に計算される税引前当期純利益がその金額により
多くなったり少なくなったりするからだ。

本に書かれていたり、ネットで見かける節税対策と違い
じっさいの企業財務を拝見すると面白いやりかたに遭遇することもある。

*くわしくは日本経営合理化協会コラムへ書いて、担当編集者に提出

㈱てるみくらぶに見る粉飾決算について

㈱てるみくらぶ社長らが、虚偽の書類を銀行に提出し融資金約2億円をだまし取ったとして詐欺などの疑いで逮捕されたそうだが、
銀行にいたときに粉飾決算をしている企業などいくつも見てきたが、刑事罰に問われる会社もあれば、
見過ごされずおとがめなしの会社もある。

では、この違いとはいったい何なのかということについて書いてみよう。

㈱てるみくらぶは㈱てるみくらぶホールディングスの100%子会社でHDに対して配当をしていたそうだ。
Wikipedia
によると、、2016年9月期決算においても、売上高117億7300万円、営業損失61億100万円、経常損失61億3000万円、純損失61億5600万円、143億2600万円の債務超過のところを、売上高194億8100万円、営業利益1億1800万円、経常利益8800万円、純利益4800万円、4憶6000万円の資産超過と偽っていたことや、2014年9月期から債務超過に陥っていたことを明らかにした(以上 wikipediaより参照
という状況で銀行から2億円あまりの融資を受けたことで詐欺に問われたらしい。

実際のところ、破産の過程で粉飾決算を公言すれば、相手から証拠を出してきた手前、詐欺で訴訟さざるをえなくなると思う。

詐欺といっても、刑法上の詐欺(1)と破産方上のもの(2)があるが、
破産などで粉飾の事実が明らかになり、それを知りながら債務者が銀行融資を受けていた場合などは
銀行から訴訟を起こされる可能性は高くなる。もっともこの状況でも
銀行側が全額回収していれば話は別だが。

では、粉飾決算をしていても訴訟や詐欺に問われないケースとは
どんな場合かと言うと、
債務者側が粉飾の事実を認めない場合、公言しない場合がある。
銀行も財務データの分析から粉飾の疑いをあぶりだすことはできても、
粉飾と確定することは出来ないのだ。
融通手形も同様だが、事実を債務者が認めないことがあげられる。

そして、法的な枠組みの中での破たん、たとえば破産・民事再生など
をしないことが粉飾の事実を隠すことになる。

世の中には、破たんしても何億円、何十億円の資産をもっている人もいる。
不公平なようだがずる賢い人間は生き残っていくものなのだ。

(1)(詐欺)
刑法第二四六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する
2、前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

第十四章 罰則

(2)
(詐欺破産罪)

第二百六十五条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。

一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為

二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為

三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為

四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

2 前項に規定するもののほか、債務者について破産手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。

架空売上による粉飾決算(黒字化)がばれない事例とは

銀行融資をうけるために架空売上を計上して黒字化するという会社を
融資を担当していた頃はみかけることがあった。

銀行の融資担当が架空売上の計上を見抜けるかといえば
そうとも言い切れない。毎年決算書しかもらわなければわからないままということもありえる。

決算書の売掛金の内訳書に毎期、同じ会社で同じ金額が記載されていれば
それが回収できない売掛金であることは推定できるが、だからといって架空売上と言い切ることもできない。
貸し倒れ債権とも考えられるからだ。

一般的に赤字の会社が黒字にみせかけるためには、架空売上を計上するか架空在庫を計上する
のだが、要は資産を増やすということに行き着く。
しかもこの資産は実体のない資産、不良資産といえる。
もちろんその他の資産を増やすことでも黒字化はできるが、架空資産または
それに準じるものになるわけだし、その他の仕訳科目が大きく増加すれば
目立ちやすい。

これら架空資産を見つけるためには
元帳を見せてもらい、あやしい売掛金の未入金経過の記録を確認し、
在庫をじっさいに確認、納品書の仕入れ単価から棚卸のしなおしを行えば
「架空」が露見することになる。

ところが、どうやってもばれないだろうという
売上というのも存在する。

IT関係でソフトをWeb上で個人に売る会社の場合
カード決済ではなく振込みで
支払ってもらうようにすれば、架空の売上かどうかさえわからない。
自社開発のソフトなら仕入などから調べることもできず
架空であることがきわめてばれにくくなるのだ。