どうして、脱税、粉飾はバレるのか?(1)

金融機関に勤めていたころから、企業再生コンサルタントに至るまでさまざまな形で
企業の財務をみてきましたが、脱税をしている、または、粉飾をしている企業に
遭遇することも多く。
あるいは、「こんな経理操作」をしていて損金経理として税務署は許すのだろうか?
という事例まで、ありえないケースを散見することも多かったのですが、
今回は「どうして、脱税、粉飾はバレるのか?」について何回かで書いてみます。

まず、いろいろな会社を見てきた経験から言うと、
粉飾に比べて脱税のほうがきわめて高い確率でバレます。
それは、それを発見しようとする人が誰か? によって違うからだと思います。
脱税は税務署がみつけだす側、
粉飾は銀行がみつけだす側
で、粉飾については税務署は納税額が増えるのでむしろ歓迎するわけで、
それをみつけたから指摘することはありえないわけです。

仮に銀行が粉飾をみつけても、貸した金は回収しなければならず、それによって債務者を追い込み
倒産させるということは、よほどの金融引き締めでもない限り考えづらいわけです。
つまり、悪い表現ですが「相手を殺せば、自分のクビも絞めかねない」わけです。

ところが、税務署は脱税者に、その情報収集能力を使い、相手を追い込んで倒産させても
「痛くもかゆくもないわけです」
さらに租税公平主義(納税者を平等に取り扱わなければならない)によって
それらの行為は正当化されます。

もちろん、脱税はけっして行なってはいけないことですが、
それを知らなければ、何がいけないのかは理解できないはずです。
そこで、このテーマで何回かに分けて書いてみます。

棚卸による利益隠しがしやすい会社

「在庫商品を見なくても、棚卸表と請求書、売上元帳で利益隠しは指摘できる」と前回書いたが
棚卸による利益隠しがしやすい会社というのも存在する。

「顧客の注文した仕様で製品を作る製造業の会社」の場合は仕様ごとに原価、粗利益率が異なり、
利益隠しをしたとしても、限られた時間での税務調査で簡単にはそれがわからないことはあると思う。
だからといって、棚卸による利益隠しはするべきではない。
これらはバレにくいというだけで、時間をかければ、すべてバレてしまうのだ。

税務調査をする側もこれに対する対策をちゃんと用意している。同業者が多い場合は平均的な比率(粗利益率など)
をもとにどこでごまかしているかを確認したり、
仕入の請求書と、作業報告書や見積書などの確認から、ごまかしを暴くのだ。
これらは、ソフト、システムなどで効率的に管理している会社の場合、そのソフト、システムを使って
比較的楽に不正や間違いを探し出せる。

税務署員にとって一番困るのは作業報告書や見積書などが読みにくい手書き
で管理されている場合、調査に膨大な時間を要することになり
途中であきらめてしまうこともある。

そう考えると、業務のシステム化とは、それを使いこなせれば不正を暴く最大の武器となるのだ。

在庫商品を見なくても、棚卸表と請求書、売上元帳で利益隠しは指摘できる

税務調査で棚卸表を調べるときは同時に仕入れの請求書、納品書なども調べられる。
これだけのものがあれば、実地で棚卸商品をみなくても
利益隠しをしているかがわかってしまう。

消費者向けの商店の場合は、一般的に粗利益率が変わることが少ないので
粗利益率の変化だけで見ても利益隠しをすればすぐにばれてしまう。

製造業者でも、いつも同じ製品を作っている会社の場合、粗利益率が変化することは少ないので
利益隠しをした場合、やはりすぐにばれることとなる。

これらの会社で粗利益率が大きく変わるのは、仕入先を変えたり、設備投資をして生産の効率化をした場合だ。

粉飾でも同じことが言える。粉飾の場合、相手は税務署でなく、銀行になることがほとんどだが、
決定的に粉飾をしているとは断定はしない。銀行の中では限りなくクロに近いというニュアンスで
融資の審査が進む。これは税務署の持つ情報収集力と銀行の情報収集力の違いによる。
また、税務署の持つ権力の大きさも影響している。

ところで、利益隠しが「粗利益率の変化」と請求書のチェックだけではわからない会社というものも
存在する。これには、顧客の注文した仕様で製品を作る会社や、事業内容を変えた会社、企業買収した会社など
が該当する。
だが、これら以外の会社の場合、棚卸金額の調整で「利益隠し」=脱税をしようとしても、
ほとんどのケースできわめて簡単にばれてしまう。

では、どのようにバレるのか? というのが
この式に集約されているのだ。

さて、おわかりだろうか?
商店を例に話をすると、図からわかるように、前期在庫と今期仕入れた商品から売れた商品を引いたものが今期の在庫となる。売れた商品は仕入れた商品に一定の利益を上乗せして売られている。つまり正しい売上がわかれば、売れた商品に対応する仕入れ総額(B)がわかり、それが売上原価と認識される。そうすると図からわかるように今期の在庫(棚卸 C)金額が自然と計算されてしまうのだ。だから、在庫と仕入れた商品の明細がわかり、何が何個、売れたかがわかれば棚卸による利益隠しがわかってしまうのだ。

最近では零細企業でも在庫管理や売上管理をソフトで管理するところが多くなり、これらの数値も楽にわかるようになってきている。それゆえに税務調査ではそれらをパソコンで確認したがるのだ。

棚卸で利益がきまる

棚卸で利益が決まるというと違和感を覚える人もいるかもしれない。
損益計算書に棚卸はでてこず、貸借対照表(バランスシート)に始めて
棚卸資産という形ででてくるものなのに、それが利益とどう結びつくのか? と。

下記の図の式をみると一目瞭然なのだが、売上から
売上原価を引いたものが粗利益(売上総利益)となる。
売上原価とは、じっさいに売れた商品の仕入れ、あるいは製造にかかった費用のことで、
在庫として計上された材料や商品は、売れた商品の仕入原価や製造原価ではないので
売上原価にはならず、それゆえに、利益を減らすことはないのだ。

たとえば、棚卸商品や材料の記載漏れがあった場合、結果としてそれが売上原価にされてしまい。
粗利益が減ることになる。
そうすると、法人税・地方税の負担額が減ることになってしまう。

つまり、棚卸をいいかげんに行えば利益の操作、納税額の操作ができてしまうのだ。

ところが、この事実を知って棚卸で利益を調整するような中小企業のほとんどが
税務調査では、棚卸は細かくチェックされないと思い込んでいるような会社で
じっさいの税務調査で、そこを指摘されるとあわてふためくのだ。

税理士も、棚卸に関してはじっさいの経験もなく門外漢であり頼りにはならず、
自社でちゃんと行うしかないのだ。
少なくとも税務署の職員が目を通す書類は精査して
矛盾がないように棚卸を作るべきなのだ。

利益を信じきってはいけない

よく、利益をだすことが大事だとか、黒字にすることが重要だといわれるが、
「利益」とは、中小企業だと税法、税務会計というルールの上にできあがる架空のものなのだということを理解している人は少ない。

これを業務上横領を例にして書いてみるとこうなる。
横領で会社が損失を被った場合、それはすぐには損失にはならない。
「そんな馬鹿な!?」 と思うかもしれないが、 法人税基本通達2-1-43にはそのような
規定がある。

不法行為に係る損害賠償金等の帰属の時期 -法人の役員等による横領等を中心に- 参考ページ国税庁HP

法人税基本通達2-1-43について、「・・・・・・その相手方が「他の者」に当たらない場合、すなわちその法人の役員又は使用人である場合には、通達上その取扱いは明らかにされておらず、上記通達の趣旨解説において「例えば、役員の場合にはその行為が個人的なものなのか、それとも法人としてのものなのか峻別しにくいケースが多いことから本通達をそのまま適用することには問題がある場合が多い。」とし、「役員又は使用人に対する損害賠償請求については本通達の取扱いを適用せず、個々の事案の実態に基づいて処理することとされている。」と記述されるにとどまっている」

「1 その損害がその法人の役員又は使用人による横領による損失であるような場合には、通常、損害賠償請求権はその時において権利が「確定」したものということができるのであるから、被害発生事業年度において、当該損失の額を損金の額に算入するとともに、損害賠償請求権を益金の額に算入する」

(上記参照ページよりの抜粋)

上記からわかるように業務上横領がされた場合、即座に純粋な損失にはできず、
その結果、これによって納税額が減ることはないことになる。
具体的にイメージとしては下記のようになる

横領だけでなく貸倒などにおいても税務会計では、利益を減らし、納税額を減らすことには
きわめて消極的になる。

だから、利益も大切だが、それは税務会計というものによって作られた仮のものであり、
それのみを信じるのではなく、コンパクトでバランスのとれた財務状況化かどうかを日ごろから
チェックすることがとても重要になるのだ。

法人に不動産を貸すと、その情報が税務署につつぬけになる不動産収入

「法人(人格のない社団等を含みます。以下同じ)に支払う不動産の使用料等については、権利金、更新料等のみを提出してください。
したがって、法人に対して、家賃や賃借料のみを支払っている場合は、支払調書の提出は必要ありません。」国税庁HP参照

不動産を法人に貸しても、賃貸料が少ない場合、不動産収入は税務署はおろか、市区町村もその収入は
捕捉できないだろうと考える人はいる。

ところが、「不動産の使用料等の支払調書」というものがあって、法人が不動産を借りた場合、法人税の申告とは別に
法定調書の中の支払調書というものを税務署に提出する義務を負う。
この義務は法人だけでなく、不動産業者である個人も負う(例外あり)。
それが No.7441 「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等に記載されているのだが、
例外があって、それが上記規定にあたる。

つまるところ、法人が大家で、借主が法人の場合、権利金、更新料等がなくて家賃だけなら、支払調書は不要と言うことになる。

●法定調書は、税法に基づいて適正に課税をすることを目的に提出を義務付けている調書で、支払調書や源泉徴収票が含まれる。
なかでも、支払調書は支払いをした事業者が、その明細を書いて税務署に提出する書類で、支払いを受けた側が申告しているかどうかを照らし合わせるために利用されています。

参照:国税庁法人に支払う賃借料 /法令等>質疑応答事例>法定調書>法人に支払う賃借料

親子ローンの危険性

親子ローンという名称のローンがある。
親と子供が債務者になり銀行などから借り入れをして
土地を買い家を建てる。または土地・家を買う。家を建てるといったものだが、
親の返済能力だけでは不安があったり、長期でローン返済をするので、親の年齢を考慮して子供も債務者とするといった場合によく使われる。

親子ローンというからには、買った不動産に親と子が一緒に住む、あるいは二世帯住宅にする場合もあるが、購入後しばらくは一緒に住むもののその後に別居するということもありえる。

住宅ローンの銀行側の管理は企業融資と違って
甘い部分もあるためおざなりにされる。

しかも、最近よくこの種のローンで問題になった事例の謄本を見ると
債務者は親と子なのに、不動産の所有者が親だけになっているケースが多い。

問題が多いのは、親が事業をしていて事業会社で多額の借入があり、返済ができなくなり、リスケを行う。そしてリスケの期限が切れて返済が遅れ始めるといったケースだ。
やがて、銀行側は期限の利益喪失を行い、社長である親に保証債務の履行を求める。
そのときに親が所有者となっているこの不動産に根抵当権または差押えが登記され、住宅ローンの融資銀行も知ることとなる。当然、住宅ローンの債務者である長男は寝耳に水なのだが、親と親の会社の債務の問題にまきこまれていくのだ。

最悪なのは、親が弁護士の所に相談に行き、大幅な債務超過の状態を確認した弁護士が親と親の会社に自己破産をすすめ、すぐにそれに従った場合だ。

このケースを上の図で見てみようと思う。
親の事業会社が無担保で多額の借金があったとすると、親の破産によって親は借金を免責され楽になるが、この不動産の所有権はいずれ破産管財人の名義となり、競売に移行する。この状態で親は破産するからいいのだが、もう一人の債務者・長男は債務から逃れることはできなくなる。親の破産は子供の債務の免責までは保証してくれない。

上の図の例で言えば、住宅ローンの残高は2,000万円で、時価は3,000万円なのだから、根抵当権、または差押えが登記される前、すなわち正常債権あるいは、それに近い状態のうちに不動産を売却すれば1,000万円近くの現金を手に入れることができる。それなのに「債務超過だから破産したほうがいいです。会社と個人が破産すれば会社の借金は免責されます」という言葉に従って、親がすぐに破産を選んでしまい、結果として長男が悲惨な状態となる。

親の期限の利益喪失、根抵当権の行使、差押えが行われ破産に進み、住宅ローンの融資銀行から子供にも催告書が届く。ブラックリストの仲間入りだ。

どうしてか? と思うかもしれが、銀行側は一般的に期限の利益喪失日を重要視する。そのためにわざわざ当然喪失なのに、債務者・連帯保証人に内容証明を送り期限の利益喪失日を明確に記する。そして、この期限の利益喪失日こそがブラックリスト登録の根拠となるのだ。

だから、親だからとか、借入金額以上の担保価値があるからとかだけで、
安易に考えてはいけないのだ。