仮払金による利益の水増し
仮払金は、勘定科目、金額が不明の金銭を支払った場合に、それが確定するまで一時的に割り当てられる勘定科目なのですが、流動資産に区分されています。
たとえば、現状赤字だがどうしても黒字決算にしたい場合、買掛金で仕入れた商品の代金200万円を支払ってしまい、金額が確定できないという理由で勘定科目は仮払金にして、さらに仕入れた商品を在庫に計上すれば、流動資産に仮払金200万円、それに該当する棚卸200万円が計上され、架空の利益が作られてしまいます。
粉飾決算は一般的に、棚卸の水増し、架空売上によることがポピュラーですが、このような勘定科目を使って、利益の水増しをすることもできてしまうのです。
差押えがついたままの建物の取り壊し
手続上だけで考えれば、差押えがついたまま、あるいは抵当権がついたままの建物を取り壊し、滅失登記を行うことはできる。
これは取り壊したという事実に基づいて登記をおこなうという報告的登記義務に根拠があるのですが、実際に、これにもとづいて差押えした債権者、担保を付けた債権者の同意なしに行うと、契約違反に該当し債権者から訴訟をおこされることがあります。
銀行取引約定では、
乙に提供されている担保について乙の責めに帰すことのできない事
由により毀損、滅失または価値の減少が生じたとき、甲または甲の保
証人の資産信用状態が悪化したとき等、乙の債権保全を必要とす
る相当の事由が生じたと客観的に認められる場合において、乙が相
当期間を定めて請求したときは、甲は乙の承認する担保もしくは増
担保を差し入れ、または保証人(電子記録保証人を含む。以下同
じ。)をたてもしくはこれを追加するものとします。
といった規定が記載されていて、これらによって
契約違反を指摘されるのです。
したがって実際上は、差押えがついたまま、あるいは担保がついたままの建物を取り壊し
滅失登記をするときは事前に同意が必要となる。
ところが、だいぶ昔に差押えされていたり、担保設定されていたりで、
債権者の所在がわからず、そもそもその債務があるかどうかもわからない
こともあります。
こんな場合はやっかいなことになりかねません。
差押えは解決したらすぐに解除してもらい、担保は担保債務がなくなったら
必ず抹消することです。
地方税滞納でおこること3 資産調査

このキャプチャー画像は税務署の照会書で、取引関係用のものです。
税金滞納者の取引先との債権・債務の状況を調べるもので、回収のため下調べをするものです。
これと同じような書類は銀行の支店には、毎日何通も郵送されています。
もちろん、税務署だけでなく、市役所なども銀行の支店に郵送しており、銀行支店によってはこれらへの回答するための事務量が増えすぎて専門の部署を設けたところもあるくらいです。
これらの書面とは別に銀行には常駐しているかのように、税務署員・役所の徴収職員が狙った滞納者、あるいは脱税の疑いのある方の預金の動きを時系列でチェックしています。私も支店にいるときはしょっちゅうお目にかかりましたし、銀行支店内の特別の部屋で国税の方々が何日も常駐して預金の動きを調べているのを経験しています。
ところで、滞納者がどこ銀行のどこの支店に預金があるかわからないだろうと思う方もいるかもしれませんが、法人であれば決算書の預貯金等の内訳書でどこに預金があるかはすぐにわかります。法人住民税・固定資産税が滞納した場合などの資産調査は徴収主体である市町村等が行いますが、管轄の税務署で決算書を閲覧することで判明してしまいます。
ただし、地方税の滞納で本社が福岡、仙台で支店登記されたところでの住民税の滞納などの場合てまひまがかかりますが。
ただ理解していただきたいのは、調べようと思えば税務署ならかなりのことが調べられますし、市役所などでも時間と人員がいさえすれば何とでもなるということです
彼らが情報を把握できるのは預金、不動産のみならず、売掛金、固定資産などがかなりの精度で調べることができます。
償却資産税という地方税がありますが、その内容を照会することで固定資産の現状も把握できてしまうのです。
結果として、わからないだろうと思われる資産もいくらでもあぶりだすことができます。では、これらをわからないようにするにはどうしたらいいのか? と思う人もいて当然ですがネット上で書く話題ではないので……。
地方税滞納でおこること2
会社が税金の納付を滞納した場合、どうなっていくかは、国税と地方税で行われることは同じですが、徴収する側が国か地方自治体かによってかなりの違いがでてきます。それは、その情報収集力の違いに起因するものですが、今回は地方税の滞納で起こることについて書いてみます。
まずは、法的根拠と
滞納処分の流れについて復習です。
1、地方税、納付期限経過しても未納 → 滞納処分開始
2、納付期限から20日以内に滞納者に督促状発送
3、滞納者の財産を調査開始 国税徴収法141条
4、督促状発送から数えて10日以内に納付できない場合は、滞納者の財産差押え
地方税法第331条第1項
5、差押えた財産を換価したり、銀行預金などは銀行から取立たりして回収する
国税徴収法94条、67条1項
これを実際の運用例で示すとこのようになる(この図は、滞納者と市役所などで、話し合いが行われ、納付していったとしても完納には数年の時間を要する場合、あるいは、滞納者が話し合いと納付をしない場合で書いています)
第九十四条 税務署長は、差押財産等を換価するときは、これを公売に付さなければならない。
2 公売は、入札又は競り売りの方法により行わなければならない。
地方税の滞納でおこること、その1(会社の場合)
会社が地方税を滞納した場合、どんなことがおこるのかという、市役所などからの督促の手紙、電話などがある。
そして、納付しないでいると呼び出しの連絡がある。そこで、会社の現状や預金口座、不動産について確認される。
それでも納付しなければ、会社所有の不動産が差押される。これは、不動産に時価余力があろうとなかろうとなされるもので、銀行の根抵当権が設定されていて銀行融資残高がある場合などは、これによって新規融資の停止はもちろんのこと、借入金全額一括返済を銀行から要求されることもある。
また、役所による預金への差押もありえる。ただし、すぐに差押が行なわれるかというとそうではなく、1~2年以上経過で実行されることが多い。
仮に役所に呼び出しをされたときに偽りの証言をしても嘘はばれる。どうしてかというと、市役所の徴収担当者は所轄税務署で法人税の申告書一式を閲覧できるからだ。
どこの銀行のどこの支店に預金があり、融資はどこで行なわれているかはもちろんのこと、固定資産の明細などで資産を把握してしまうのだ。
また、市役所の徴収担当者には国税徴収法141条にもとづく質問検査権もあり、さまざまなことができてしまう。
さらに、 市役所の徴収担当者 は、上司に対する報告と、何をすれば滞納した税金を回収できるか考える必要があるため、滞納者との話の中でいやがることが何なのかを探ることになる。相手がいやがることをやれば回収につながるからだ。
それゆえに、これらにたいし会社としてどう対応すべきなのかについて何回かに分けて書いていこうと思う。
e-gov参照 国税徴収法141条