税金の滞納で無剰余不動産に差押えがついた場合、差押え解除はできるのか?

「税金の滞納で無剰余不動産に差押がついた場合、差押解除はできるのか?」
この質問に対する回答は、「滞納した税金が納付されるまで解除されない」です。

無剰余不動産 とは下記の例のような不動産で、
その不動産の時価以上に根抵当権・抵当権などが設定されていて、
時価以上の金額の担保される債務が残っているもので、
仮に差押え、競売をしても担保価値がない状態なので回収余力がない不動産のことを言います。
下記のケースでは時価1億円の不動産にA銀行からの借入金6億円が担保されていて
じっさいに根抵当で6億円が設定されています。

無剰余不動産
このようなケースで、税務署や自治体が新たに差押えをしても
回収余力はありません。

じっさい、国税徴収法第48条に「超過差押及び無益な差押の禁止」(注1)という条文があり、
その2項で無剰余不動産への差押えは禁止されていますが、現実では
税金を滞納した企業・個人の所有動産に当たり前のように差押えがされます。
その根拠は国税徴収法 第47条(注2)、地方税法第331条(注3)です。

実質破たんした企業や、融資の返済を延滞した企業や個人から相談を受け
ると税金も滞納しているケースが多く、
その所有不動産登記簿謄本をとりよせると、必ずと言っていいほど
自治体などによる差押えがされています。

この差押えに異議を申し立てることも可能ですが、じっさいにやってみると、
高松高裁の判例を明示して却下されるだけです。

私自身もあきらかに無剰余な不動産に対する差押えで、異議申立てをしたことがありましたが、やはりだめでした。
ちなみに下記が役所から届いた却下の書面です。

不動産差押えに対する異議申立てへの役所の回答

(注1)
(超過差押及び無益な差押の禁止)
第四十八条 国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押えることができない。
2 差し押えることができる財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び徴収すべき
国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額をこえる見込がないときは、
その財産は、差し押えることができない。

(注2)
国税徴収法 第四十七条
次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。

(注3)
地方税法第三百三十一条
市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、
市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、
滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、
その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに
その督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。

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