地方税滞納でおこること3 資産調査

このキャプチャー画像は税務署の照会書で、取引関係用のものです。
税金滞納者の取引先との債権・債務の状況を調べるもので、回収のため下調べをするものです。
これと同じような書類は銀行の支店には、毎日何通も郵送されています。
もちろん、税務署だけでなく、市役所なども銀行の支店に郵送しており、銀行支店によってはこれらへの回答するための事務量が増えすぎて専門の部署を設けたところもあるくらいです。

これらの書面とは別に銀行には常駐しているかのように、税務署員・役所の徴収職員が狙った滞納者、あるいは脱税の疑いのある方の預金の動きを時系列でチェックしています。私も支店にいるときはしょっちゅうお目にかかりましたし、銀行支店内の特別の部屋で国税の方々が何日も常駐して預金の動きを調べているのを経験しています。

ところで、滞納者がどこ銀行のどこの支店に預金があるかわからないだろうと思う方もいるかもしれませんが、法人であれば決算書の預貯金等の内訳書でどこに預金があるかはすぐにわかります。法人住民税・固定資産税が滞納した場合などの資産調査は徴収主体である市町村等が行いますが、管轄の税務署で決算書を閲覧することで判明してしまいます。

ただし、地方税の滞納で本社が福岡、仙台で支店登記されたところでの住民税の滞納などの場合てまひまがかかりますが。 

ただ理解していただきたいのは、調べようと思えば税務署ならかなりのことが調べられますし、市役所などでも時間と人員がいさえすれば何とでもなるということです

彼らが情報を把握できるのは預金、不動産のみならず、売掛金、固定資産などがかなりの精度で調べることができます。

償却資産税という地方税がありますが、その内容を照会することで固定資産の現状も把握できてしまうのです。

結果として、わからないだろうと思われる資産もいくらでもあぶりだすことができます。では、これらをわからないようにするにはどうしたらいいのか? と思う人もいて当然ですがネット上で書く話題ではないので……。

地方税滞納でおこること2

会社が税金の納付を滞納した場合、どうなっていくかは、国税と地方税で行われることは同じですが、徴収する側が国か地方自治体かによってかなりの違いがでてきます。それは、その情報収集力の違いに起因するものですが、今回は地方税の滞納で起こることについて書いてみます。

まずは、法的根拠と
滞納処分の流れについて復習です。

1、地方税、納付期限経過しても未納 → 滞納処分開始

2、納付期限から20日以内に滞納者に督促状発送

3、滞納者の財産を調査開始 国税徴収法141条

4、督促状発送から数えて10日以内に納付できない場合は、滞納者の財産差押え
地方税法第331条第1項

5、差押えた財産を換価したり、銀行預金などは銀行から取立たりして回収する
国税徴収法94条67条1項

これを実際の運用例で示すとこのようになる(この図は、滞納者と市役所などで、話し合いが行われ、納付していったとしても完納には数年の時間を要する場合、あるいは、滞納者が話し合いと納付をしない場合で書いています)

根拠条文 参照:
地方税法(市町村民税に係る滞納処分)
第三百三十一条 市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
二 滞納者が繰上徴収に係る告知により指定された納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
国税徴収法(質問及び検査)
第百四十一条 徴収職員は、滞納処分のため滞納者の財産を調査する必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、次に掲げる者に質問し、又はその者の財産に関する帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。第百四十六条の二及び第百八十八条第二号において同じ。)を検査することができる。
一 滞納者
二 滞納者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由がある第三者
三 滞納者に対し債権若しくは債務があり、又は滞納者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者
四 滞納者が株主又は出資者である法人
国税徴収法(差し押えた債権の取立)
第六十七条 徴収職員は、差し押えた債権の取立をすることができる。
2 徴収職員は、前項の規定により取り立てたものが金銭以外のものであるときは、これを差し押えなければならない。
3 徴収職員が第一項の規定により金銭を取り立てたときは、その限度において、滞納者から差押に係る国税を徴収したものとみなす。
4 国税通則法第五十五条第一項から第三項まで(納付委託)の規定は、第一項の取立をする場合において、第三債務者が徴収職員に対し、その債権の弁済の委託をしようとするときに準用する。ただし、その証券の取り立てるべき期限が差し押えた債権の弁済期後となるときは、第三債務者は、滞納者の承認を受けなければならない。
国税徴収法(公売)
第九十四条 税務署長は、差押財産等を換価するときは、これを公売に付さなければならない。
2 公売は、入札又は競り売りの方法により行わなければならない。

税や社会保険の滞納で自治体等はどのように差押さえる資産を探すのか?

まず、税金や社会保険料が納期限までに納付されない場合、国であれ自治体であれ
管轄する役所は督促を行い、交渉し、財産調査を行い差押を行うこととなる。

根拠条文は下記ですが、
増加する税金滞納の状況と徴収担当人員の減少から
督促状が届いて10日後に差押があったなんていう規定どうりの話は聞いた事がない。
市役所などだと、徴収担当者が一人で数百件の滞納案件をかかえ、さらに新規が発生して
財産調査もままならないのが実情だから、督促状、交渉のあいまをみて
財産がどこにあるのかを確認する。

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(差押の要件)
国税徴収法第四十七条  
次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一  滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。

二  納税者が国税通則法第三十七条第一項 各号(督促)に掲げる国税をその納期限(繰上請求がされた国税については、
当該請求に係る期限)までに完納しないとき。

2  国税の納期限後前項第一号に規定する十日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき国税通則法第三十八条第一項 各号(繰上請求)
の一に該当する事実が生じたときは、徴収職員は、直ちにその財産を差し押えることができる。
参照元条文

(市町村民税に係る滞納処分)
地方税法第三百三十一条  市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、
滞納者の財産を差し押えなければならない。
一  滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。

二  滞納者が繰上徴収に係る告知により指定された納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
参照元条文
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では、具体的に滞納者の財産調査はどのように行われているのか、
書いてみたい。

まず、国税が滞納した場合の滞納者の財産調査は
2001年に国税庁に導入されたKSKシステムによる情報(たれこみされた情報まで管理されている)や
各国税局でもっている情報などかなり膨大な情報が税務署内にすでにあり、本気になれば高い精度で情報が把握されているので、
また、別の機会に書くことにして、
今回は市町村などの自治体の財産調査についてに限定する。

市町村などの自治体が税金滞納者への対応は督促、話し合いがまず第一歩となる。
そして、らちがあかない場合に始めて財産調査、差押と進むことになる。

では、その財産調査において市町村の徴収担当者はどのようなことを行うかだが、
まず、市役所なら市役所内にある情報から手をつけることになる。
それと同時に近隣の銀行支店へ文書で照会書をだし、滞納者の預金の状況を確認することとなる。

つまり、財産調査といっても不動産と預金が中心になることは理解できるだろう。

たとえば、固定資産税が滞納すれば、その不動産があることがわかり、それを即差押することになる。
不動産に銀行の根抵当権が目一杯ついていて借入金がそれと同じくらいあるから
その不動産を売却しても滞納した税金の回収にはまわらない、いわゆる「無益な差押であり、それは禁止されている」と言っても
平成11年7月19日高松高裁判決があるので通用しない(詳細は別ページに記載

さらに徴収担当者は不動産登記簿謄本を取得し、共同担保目録から、それとは別の所有不動産をわりだし、さらに差押えることになる。
一般的に銀行は融資先が担保不足の場合、複数不動産に共同担保を設定するので、共同担保目録を見れば所有不動産が判明するのだ。

差押えた不動産が換価され配当がなくても、滞納者にプレッシャーを与える意味で、あるいは交渉の場につかせ支払をさせる意味で
これは重要になる。

預金調査だが、銀行から回答が来た回答書をもとに狙いをつけていくことになる。
もっとも、滞納者が法人であれば、決算書の預貯金等の内訳書からかんたんにどこに預金があるかわかるので
作業は難しくはない。

そして徴収担当者は、銀行に出向き滞納者の預金の動きをじかに見て
差押日を判断することになる。

徴収担当者が調査をするべき根拠条文は国税徴収法141条、142条にあり
それを根拠にすべきという地方税法の規定によって決められている。

これらの預金で当座預金を差押るときは徴収担当者のレベルによっては
いくつか注意を要している。
支払手形の決済日の手形交換時間後に差押をする銀行支店に徴収担当者が到着しても
預金が決済後なのでもぬけのからになっていることがあるからだ。

また逆に、手形決済資金を差押えることで手形不渡、銀行取引停止処分などになりかねず、
滞納金の回収どころか、その会社をいっきに倒産させることになりかねないからだ。

ここらへんの判断は徴収担当者にとっては難しい。

ちなみに徴収担当者がネットをとうして銀行の預金調査を依頼し、ネットをとうして
回答。差押を行うという銀行もでてきている。

差押をうけても、企業はすぐに死ぬわけではない。
じっさいにそれでも平然と事業を続けている企業もある。
いろいろな回避策もあるがここで書くべきものではないし、
抜本的な解決にはならない。

ただ、彼ら徴収担当者も仕事であり
税金を払うのは国民の義務なのだ。
それゆえに、督促を受ける前にこちらから分納についての相談をしたほうのが得策だと思う。

__________

国税徴収法
(質問及び検査)

第百四十一条  
徴収職員は、滞納処分のため滞納者の財産を調査する必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、次に掲げる者に質問し、
又はその者の財産に関する帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては
認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)
の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。第百四十六条の二及び第百八十八条第二号において同じ。)を検査することができる。
一  滞納者

二  滞納者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由がある第三者

三  滞納者に対し債権若しくは債務があり、又は滞納者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者

四  滞納者が株主又は出資者である法人

(捜索の権限及び方法)

第百四十二条  徴収職員は、滞納処分のため必要があるときは、滞納者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる。

2  徴収職員は、滞納処分のため必要がある場合には、次の各号の一に該当するときに限り、
第三者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる。
一  滞納者の財産を所持する第三者がその引渡をしないとき。

二  滞納者の親族その他の特殊関係者が滞納者の財産を所持すると認めるに足りる相当の理由がある場合において、その引渡をしないとき。

3  徴収職員は、前二項の捜索に際し必要があるときは、滞納者若しくは第三者に戸若しくは金庫その他の容器の類を開かせ、
又は自らこれらを開くため必要な処分をすることができる。

参照元条文

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銀行融資の返済が延滞し、税金が滞納しても 生きている企業

銀行融資の返済が延滞し、税金が滞納しても生きている企業にはいくつかのパターンがある。
じっさい、この状態を数年も維持している企業もかなりある。
しかも、第二会社ではなく一度は破たんした会社で生き続けているのだから、
常識のある方々にしてみればありえないこととなる。

今でこそ再生させ黒字化し、資金繰りに悩まないようにした企業の完全復活に仕事の重点を移しているが、
数年前まではこの手の企業からの再生依頼が8割を越していたわけだから
「銀行融資の返済が延滞し、税金が滞納しても生きている企業」についてはとても詳しくなった。

もちろん、この手の企業がその行く末を社会的な枠組みの中にある方々、弁護士であったり
公的機関であったりに任せてしまえば民事再生や破産に行き着き
すぐに結論がでてしまう。

もちろん、その選択肢もありえるのだが、なかにはリスクを抱えながらも
生きられる企業というものもあるのだ。

では、こんな状態でも、企業が生きられるかどうかの判断基準についていくつか書いてみたい。

1、まずは、国税、とりわけ消費税の滞納がないことが必須となる。

国税庁の統計では消費税の新規滞納金額は増加し続けているようだが、
統計年報( 国税徴収・国税滞納・還付金 )参照 

消費税が滞納したままで事業を継続していくのはいばらの道以上のことなのだ。
まず、税務署と分割納付の交渉をしても短期間、1年以内での完全納付を要求されることや、
次年度の消費税の中間納付が追い討ちをかけること。
さらには、条件履行が出来ない場合、所有不動産があれば差押がかけられること。それによって
担保を設定している銀行が競売を選択してしまうことなどがあげられる。
さらには税務署はKSKシステム(国税総合管理システム)による情報をはじめ、質量ともに膨大な企業情報を
もっているがゆえに本気になれば資産をおさえることはかんたんなのだ。

2、当座比率の高い事業をもっていて、その売上の割合が高いこと。

当座比率が高ければ資金繰りに苦労しなくてすみ、仮に返済の滞納があっても
事業の継続はできるのだ。

3、そして3つ目が経営者の柔軟性と逃げない前向きな姿勢。

4、事業を継続していく中で、これからいくつもの経験したことのない問題にぶちあたる。
これは法的手続ではないので、「海図なき航海」とも言え、弁護士や税理士などの解答がすでに与えられている世界とは
異なるので、このてのリスクを管理できるかどうかになると思う。

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なのだが、この「破産しても2億円の資産と3000万円の年収を守った!」ケースにおいては、
私が関与したときには主債務者はすでに破産していたので、
別除権をもつ銀行への一括返済を長期分割にしてもらう再生案をたて、
その他数億円の債権者には破産で回収をあきらめてもらう方法をとった。
もちろん、破産管財人・弁護士の承諾があってのことだが
そんな奇跡のようなこともできてしまうのだ。
今では、この方法をおこなってもうまくはいかないだろうが、
逃げずに前向きに立ち向かえば解決策はあるものなのだと思う。

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