棚卸による利益隠しがしやすい会社

「在庫商品を見なくても、棚卸表と請求書、売上元帳で利益隠しは指摘できる」と前回書いたが
棚卸による利益隠しがしやすい会社というのも存在する。

「顧客の注文した仕様で製品を作る製造業の会社」の場合は仕様ごとに原価、粗利益率が異なり、
利益隠しをしたとしても、限られた時間での税務調査で簡単にはそれがわからないことはあると思う。
だからといって、棚卸による利益隠しはするべきではない。
これらはバレにくいというだけで、時間をかければ、すべてバレてしまうのだ。

税務調査をする側もこれに対する対策をちゃんと用意している。同業者が多い場合は平均的な比率(粗利益率など)
をもとにどこでごまかしているかを確認したり、
仕入の請求書と、作業報告書や見積書などの確認から、ごまかしを暴くのだ。
これらは、ソフト、システムなどで効率的に管理している会社の場合、そのソフト、システムを使って
比較的楽に不正や間違いを探し出せる。

税務署員にとって一番困るのは作業報告書や見積書などが読みにくい手書き
で管理されている場合、調査に膨大な時間を要することになり
途中であきらめてしまうこともある。

そう考えると、業務のシステム化とは、それを使いこなせれば不正を暴く最大の武器となるのだ。

在庫商品を見なくても、棚卸表と請求書、売上元帳で利益隠しは指摘できる

税務調査で棚卸表を調べるときは同時に仕入れの請求書、納品書なども調べられる。
これだけのものがあれば、実地で棚卸商品をみなくても
利益隠しをしているかがわかってしまう。

消費者向けの商店の場合は、一般的に粗利益率が変わることが少ないので
粗利益率の変化だけで見ても利益隠しをすればすぐにばれてしまう。

製造業者でも、いつも同じ製品を作っている会社の場合、粗利益率が変化することは少ないので
利益隠しをした場合、やはりすぐにばれることとなる。

これらの会社で粗利益率が大きく変わるのは、仕入先を変えたり、設備投資をして生産の効率化をした場合だ。

粉飾でも同じことが言える。粉飾の場合、相手は税務署でなく、銀行になることがほとんどだが、
決定的に粉飾をしているとは断定はしない。銀行の中では限りなくクロに近いというニュアンスで
融資の審査が進む。これは税務署の持つ情報収集力と銀行の情報収集力の違いによる。
また、税務署の持つ権力の大きさも影響している。

ところで、利益隠しが「粗利益率の変化」と請求書のチェックだけではわからない会社というものも
存在する。これには、顧客の注文した仕様で製品を作る会社や、事業内容を変えた会社、企業買収した会社など
が該当する。
だが、これら以外の会社の場合、棚卸金額の調整で「利益隠し」=脱税をしようとしても、
ほとんどのケースできわめて簡単にばれてしまう。

では、どのようにバレるのか? というのが
この式に集約されているのだ。

さて、おわかりだろうか?
商店を例に話をすると、図からわかるように、前期在庫と今期仕入れた商品から売れた商品を引いたものが今期の在庫となる。売れた商品は仕入れた商品に一定の利益を上乗せして売られている。つまり正しい売上がわかれば、売れた商品に対応する仕入れ総額(B)がわかり、それが売上原価と認識される。そうすると図からわかるように今期の在庫(棚卸 C)金額が自然と計算されてしまうのだ。だから、在庫と仕入れた商品の明細がわかり、何が何個、売れたかがわかれば棚卸による利益隠しがわかってしまうのだ。

最近では零細企業でも在庫管理や売上管理をソフトで管理するところが多くなり、これらの数値も楽にわかるようになってきている。それゆえに税務調査ではそれらをパソコンで確認したがるのだ。

棚卸で利益がきまる

棚卸で利益が決まるというと違和感を覚える人もいるかもしれない。
損益計算書に棚卸はでてこず、貸借対照表(バランスシート)に始めて
棚卸資産という形ででてくるものなのに、それが利益とどう結びつくのか? と。

下記の図の式をみると一目瞭然なのだが、売上から
売上原価を引いたものが粗利益(売上総利益)となる。
売上原価とは、じっさいに売れた商品の仕入れ、あるいは製造にかかった費用のことで、
在庫として計上された材料や商品は、売れた商品の仕入原価や製造原価ではないので
売上原価にはならず、それゆえに、利益を減らすことはないのだ。

たとえば、棚卸商品や材料の記載漏れがあった場合、結果としてそれが売上原価にされてしまい。
粗利益が減ることになる。
そうすると、法人税・地方税の負担額が減ることになってしまう。

つまり、棚卸をいいかげんに行えば利益の操作、納税額の操作ができてしまうのだ。

ところが、この事実を知って棚卸で利益を調整するような中小企業のほとんどが
税務調査では、棚卸は細かくチェックされないと思い込んでいるような会社で
じっさいの税務調査で、そこを指摘されるとあわてふためくのだ。

税理士も、棚卸に関してはじっさいの経験もなく門外漢であり頼りにはならず、
自社でちゃんと行うしかないのだ。
少なくとも税務署の職員が目を通す書類は精査して
矛盾がないように棚卸を作るべきなのだ。