税や社会保険の滞納で自治体等はどのように差押さえる資産を探すのか?(不動産)

会社、またはその経営者の場合、複数の不動産を持つ例は多い。
会社が所有する不動産の場合、事業に必要な不動産であることがほとんどで詳細は決算書で判明する。
ところが会社経営者個人がどんな不動産を所有しているかはわからない場合がある。

たとえば会社の融資はA銀行のみでおこない、社長の自宅以外の不動産を購入するときはB信用金庫にした場合など
A銀行からすれば、その社長所有不動産はみすごされることになる。
もっとも、個人信用情報を取得したり、その不動産が収益不動産で社長がアパート経営をしている場合などは
個人の確定申告から判明してしまうことになる。

また、銀行でいえば最初に融資を行うときに作る調書の聞き取りの中で個人所有不動産を記載してあり、そこで判明する場合もある。

では、自治体等は税金の滞納による差押不動産を探すときにどんなやりかたをするのか?

一般的には、市町村であれば自治体内部・役所内部でもっている情報から着手する
同じ市内に不動産を複数持っているかは、固定資産税を調べればわかる。
そして不動産登記簿謄本を取得することになる。
このさいに共同担保目録付で謄本を取得する。
下記申請書の赤囲みの部分をチェックするのだ。

同一債権の担保として、複数不動産の上に設定された抵当権(あるいは根抵当権)
のことを共同担保というが、これは担保強化につながる点から
このような共同担保で担保設定されることが一般的なのだ。

そうやって取得した不動産登記簿謄本から銀行には
どの不動産とどの不動産が共同担保になっているかがわかるようになっている。
下記の不動産担保目録のように、同じ住所の土地・建物はもちろんのこと、異なる住所の不動産も
共同担保としてその所在が判明してしまう。

だからといって所有者が同じとはかぎらないが、少なくとも共同担保目録に記載された
不動産登記簿謄本を調べれば、関連でどんな不動産があり、
同一所有者の不動産はどれとどれかなどが、数珠繋ぎに判明することになる。
借入金・リース契約の場合、社長の個人保証が前提となるため
この共同担保目録取得は効果的な隠れ財産のあぶり出し方法になる。

もしも、経営者個人の財産を銀行や自治体、債権者に隠しておきたければ
別会社を作りその会社の所有で不動産をまったく異なる銀行ローンで購入したり、
所有者を妻名義にしたりということになる。

会社が倒産したときに、代表者の個人信用情報照会を取得しない
銀行も多いし、自治体はそれさえ取得できないから、
会社が破たんしてもそうやって個人財産は守られているケースも多いのだ。

地方自治体相手に「無益な差押え」にもとづく異議申立をしても何の効果もない

「無益な差押」とは簡単に言えば、余力がない不動産に差押さえをしても
何も回収できないので、差押さえしてはいけませんということだ。
これはいずれも法で規定されている。国税徴収法第48条2項がそれなのだが、
地方税においてもそれに従う(地方税法第373条7項)ということになっている。

国税徴収法第48条2項
第四十八条
国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押えることができない。
2  差し押えることができる財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先だつ他の国税、
地方税その他の債権の金額の合計額をこえる見込がないときは、その財産は、差し押えることができない。

ところが、破たんした企業の実情をみると
余力のない不動産に地方自治体などから差押さえはばんばん設定されている。

時価1億円の不動産で、根抵当権10億円、債務10億円
といった状況でも差押は公然とされる。

法に違反しているのだが、地方自治体の考えは違う。
高松高裁 平成11年7月19日判決で「必ずしも違法とはいえない」というものがあるからだ。

地方自治体などから無益な差押さえがあったら、異議を申し立ててみると
ほとんど例外なく棄却という文書が1か月後に送られてくる。

じっさいの文書は下記のようなもので、全国ほとんどの自治体で
文言は同じになる。高松高裁の判決がその根拠となる。

これを行政訴訟で争っても無意味で
不動産の差押解除は自治体によって対応は違うが
基本的に全納が前提となっている。

地方税滞納で無剰余不動産に差押がついた場合、差押解除はできるのか?

「地方税滞納で無剰余不動産に差押がついた場合、差押解除はできるのか?」というタイトルで
書き始めたが、結論から言ってしまおう。

「できないと思ってください」・・・これが結論だ。

無剰余不動産 とは下記の例のような不動産で
差押されてても 余力がないんだから無意味で、そこから
回収できないというものだ。

都道府県、市区町村などによる無剰余不動産への差押は、
地方税法第373条7項、国税徴収法第48条2項により禁止されているが、この条文をくつがえす
高裁の判決を引用して、都道府県、市区町村はそれに対する
異議申し立てを棄却してくる。

これについては日本経営合理化協会のWEBの
坂田薫「債務者のルール」に書いてあるので参考にされたい。

下記の様な例でも異議申し立ては棄却になるのだから、この制度に期待しないほうがいい。

1

時価余力のある担保不動産の余力は自社の資産として守れるのか?

時価余力のある担保不動産の余力は自社の資産として守れるのか?
とおおざっぱな質問がけっこうされる。

資産より借入金残高のほうが多い場合
この質問は切実な債務者の悩みとなる。

具体的に言うとこんなケースだ。

時価8,000万円の不動産に根抵当権などの担保対応の債権が5,000万円ある場合
これを売ってあまった3,000万円近くのお金は債務者が自由に使えるかどうか?
という問題だ。

担保不動産の時価余力

結論から先に言うと、
その債務者が期限の利益を喪失していたり、債務者区分で
破綻懸念先だったりすれば、後順位で担保をつけさせてくれと
債権者が言ってきたり、差押・仮差押があったりと自由に出来ない
可能性が高い。

ところが、財務内容が悪くても
この不動産を売却して、あまったお金は資金繰りに充当。
説得力のある再建計画を出し、結果がでてきている状況なら
自由に使えるケースもあるのだ。

ただし、早めに対応したほうがいいにきまっているので。